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なぜ、採用すればするほど組織が弱くなるのか?その答えは「入口」のミスマッチです。入社後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐ、仕事の現実を正直に伝える採用戦略(RJP)を専門家が解説します。
「採用費を投資し、研修に時間をかけたのに、また新人が辞めてしまった…」
「辞めた新人の穴を埋めるためにまた採用するが、入ってもまた辞める。採用すればするほど、現場のSVは疲弊していく…」
あなたのセンターでは、この「採用と研修の無限ループ」が、静かに組織を蝕んでいませんか?
採用は組織を強くするはずなのに、なぜか組織が弱くなる。この逆説的な現象は、コールセンターの離職問題の最も深刻な側面です。
この悲劇の真の原因は、新人の意欲や能力不足ではありません。
それは、「採用」の時点ですでに、組織と入社希望者の間で致命的なミスマッチが発生しているからです。
今回は、新人の離職コストの根源を断つ、入社後の「こんなはずじゃなかった」をゼロにする採用戦略について解説します。
「採用」が組織を弱くする、逆説的なメカニズム
なぜ、採用がマイナスに働くのか。それは、多くのコールセンターが、採用活動において、以下の「三つの嘘」をついてしまうからです。
嘘1:「誰でもできる簡単なお仕事です」
現実: 顧客対応はもちろん、多岐にわたるシステム操作、売上目標へのコミット、クレーム処理、そしてなにより「常に笑顔でプロフェッショナルであろうとする精神力」が求められる、極めて難易度の高い専門職です。
嘘2:「ノルマはありません」
現実: 直接的なノルマがなくても、CPH(時間あたりの処理件数)やACW(後処理時間)、応対品質スコアなど、数値目標による厳格な管理(KPI)が存在します。
嘘3:「将来はSVになれますよ」
現実: SVの仕事は単なるオペレーターの延長ではありません。経理、人件費管理、クライアント折衝、運用設計といった、全く別の高度なマネジメントスキルが必要です。
これらの「嘘(=事実の隠蔽)」によって、入社時の期待値は最高潮に達しますが、入社した新人は「自分が想定していた仕事と違う」という強烈なギャップに直面します。このギャップこそが、「離職へのカウントダウン」の始まりなのです。
離職の根源を断つ、「RJP(現実的な仕事内容の事前提示)」の3つの原則
「採用しては辞められる」という無限ループから抜け出すためには、採用戦略を「入社数を増やす」ことから「ミスマッチを減らす」ことへと、根本的に見直す必要があります。
原則1:スクリーニングするのは「スキル」ではなく「覚悟」
面接で確認すべきは「敬語が使えるか」といったベーシックスキルだけではありません。
我々の育成プログラムが定義する「優秀な人材」とは、**「在宅でも他人任せにせず主体的に問題解決に取り組める方」**といった、業務に耐えうる「マインド(覚悟)」を持つ人材です。
採用面接では、以下のような質問で、その「マインド」の有無を見極めます。
- 「クレームで激しく非難された時、あなたは責任をどう考えますか?」
- 「システムがダウンしてマニュアルも見られない時、あなたなら最初に何をしますか?」
原則2:面接で「最も嫌なこと」を正直に伝える
採用面接では、「良いこと」を伝えるのをやめ、仕事の現実(ネガティブな側面)を包み隠さず提示します。これがRJP(Realistic Job Preview)の核心です。
伝えるべき事実:
- 「クレームを週に数回受ける可能性があり、非常に精神的な負担がかかること」
- 「システムにトラブルがあっても、お客様の前では常に冷静に対応する必要があること」
- 「評価は『心地よい話し方』といった曖昧な感覚 ではなく、CPHといった客観的な数値で厳しく管理されること」
この情報を聞いた上で、「それでも、この環境で成長したい」と自らコミットする人材こそが、真に定着し、組織の資産となる人材です。
原則3:採用を「人事の仕事」から「現場の仕事」にする
採用の主導権を、求職者のスキルや経歴しか見ない人事部門から、その人物が組織で定着するかどうかを最も正確に判断できる現場のSV・管理者へと移管します。
- 現場の管理者は、自らのチームの穴を埋めるために、「どれだけ仕事が大変か」を正直に伝える責任があります。
- 面接にSVが参加し、具体的な「SVタスク」の重さを見せることで、応募者は入社後の「キャリアの厳しさ」を正しく認識できます。
「採用のプロ」に任せるのではなく、「離職コストのプロ」である現場の管理者が、未来のチームメンバーを「見極める」ことが重要なのです。
採用を「コスト」ではなく「投資」に変える
採用は、組織の未来を決める最初の、そして最も重要なプロセスです。
「誰でも良いから、とにかく早く穴を埋めたい」という安易な採用戦略を続ける限り、離職コストは際限なく組織の体力を奪い続けます。
採用の基準を「スキル」から「覚悟」へ、面接を「セールス」から「リアリティの提示」へと変革すること。
それこそが、採用コストを「消えてなくなる損失」ではなく、「未来の組織資産への確実な投資」に変える、経営者の英断なのです。
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私たちは、貴社の「入社後の仕組み改善」だけでなく、「採用戦略の抜本的な見直し」までを支援します。
私たちのプログラムは、まず貴社の「診断」を通じて、貴社の求人情報、面接フロー、現場の離職率データの構造的な因果関係を徹底的に洗い出します。
その上で、貴社の業務実態に合わせた「RJPに基づく面接マニュアル」と、「定着する人材を見抜く質問リスト」を共同で「計画・策定」し、現場のSVがそれを正しく運用できるようになるまで、徹底的に「実行支援」いたします。
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この記事を書いた人
コンサルタント永久 圭一keiichi Nagaku
債権管理業務に計15年、コールセンター事業者2社(計13年)に在籍
SVや地方センターや在宅業務センターのセンター長等に従事後独立
保有資格
DX推進パスポート
JDLA Deep Learning for GENERAL (G検定)COPCリーンシックスシグマイエローベルト
- コンプライアンス・オフィサー・消費者金融コース
- ビジネスキャリア検定(労務管理)






