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「もっと主体的に」この抽象的な目標が、新人のやる気を削ぎ離職に繋がります。SV必見。「願望」を「具体的な行動」に変換し、事実で伝えるフィードバック技術を専門家が解説。
「今月の君の目標は、『もっと主体的に動くこと』にしよう」
「お客様対応、もっと“しっかり”やってくれるかな?」
コールセンターのSV(スーパーバイザー)が、良かれと思って新人に伝えた目標設定。しかし、これを受け取った新人の頭の中は「?」でいっぱいです。
(“主体的に”って、何をすればいいんだろう?)
(“しっかり”って、具体的にどういう状態?)
SVは「期待」を伝えたつもりでも、新人は「具体的な行動」が分かりません。結果、新人は何をしても「それが正解か分からない」という不安の中で疲弊し、SVは「期待通りに動かない」と不満を募らせる。
このすれ違いこそが、新人の「自分は評価されていない」という不信感を生み、成長を止め、静かな離職へと繋がる「失敗の目標設定」の正体です。
なぜ、あなたの“期待”は、新人に「伝わらない」のか
この失敗の原因は、SVが「目標(あるべき状態)」と「行動(具体的なタスク)」を、完全に混同しているからです。
「主体的に動く」や「しっかりやる」は、目標ですらありません。それはSVの「抽象的な願望(感想)」に過ぎないのです。
新人に「抽象的な願望」を伝えても、彼らが具体的な「行動」に移せるはずがありません。さらに、フィードバックの場面でも、この“抽象病”は連鎖します。
- 悪いフィードバック(感情・解釈): 「君、昨日やる気なさそうだったね」
- 新人の本音: (そんなつもりはないのに…。『やる気』って、どう見せればいいんだ?)
SVは「やる気がない」という自分の“解釈(感情)”を、あたかも“事実”であるかのように伝えてしまっています。これでは新人は、自分の人格を否定されたと感じ、心を閉ざすだけです。
「抽象」を「具体的行動」に変える、2つのフィードバック技術
では、どうすれば新人が「何をすれば評価されるのか」を明確に理解し、自ら行動できるようになるのか。私が現場で常に実践してきた、2つの具体的な技術をご紹介します。
技術1:最初に「行動レベルの“正解”」を定義する
新人に何かを期待する時、最初に伝えるべきは「何が“正解”か」です。「抽象的な願望」を、「Yes/Noで判定できる、具体的な行動」にまで分解して提示するのです。
悪い例(抽象的な願望): 「もっと主体的に動いてほしい」
良い例(具体的な“正解”の定義):「このチームでの『主体的な行動』とは、次の2つを定義します。
- お客様からの質問に対し、まずマニュアルのP.5を“自分で”確認する。
- それでも不明な場合のみ、“自分の仮説を持って”SVに質問に来る。
この2つができたら、君は『主体的に動けた』ということです」
ここまで定義されて初めて、新人は「明日から何をすべきか」が分かり、迷わず行動に移すことができます。
技術2:「感情(解釈)」と「事実」を分離して伝える
「やる気がない」といった“感情論”をフィードバックから排除します。SVが伝えることを許されるのは、客観的に観測された「事実」だけです。
悪い例(感情・解釈): 「君、昨日やる気なさそうだったね」
良い例(事実ベースの質問):「昨日、お客様への返答に5秒間の沈黙があったね(事実)。あの時、システム画面のどこを見ていたか、“事実”を教えてくれる?(行動の確認)」
「5秒の沈黙」という事実に焦点を当てれば、会話は「新人のやる気の有無」ではなく、「マニュアルの検索性が悪い」とか「PCの動作が遅い」といった、「仕組み(Problem)の改善」へと向かいます。
新人は責められたと感じず、「事実」に基づいて業務を改善する当事者になれるのです。
「具体的な行動」の定義こそが、SVの最重要スキル
新人が成長しないのは、彼らの能力が低いからではありません。SVが「期待」という名の“抽象的なボール”を投げつけ、具体的な「行動」の“正解”を示していないからです。
新人の離職コストを削減したいなら、まず、管理職が「抽象的な言葉」で新人を混乱させるのをやめなければなりません。
「しっかり」「ちゃんと」「主体的に」といった言葉を社内から追放し、すべてを「具体的な行動」に変換して定義すること。それこそが、新人が迷わず成長できる組織を作る、唯一の道です。
【新人オペレーターが辞めない組織を作る『定着率改善』実践プログラム】
私たちのプログラムでは、SV(スーパーバイザー)が「抽象的な願望」を「具体的な行動目標」に変換するための、徹底的なフィードバックトレーニングを行います。
貴社の業務を「診断」し、「主体性」や「品質」といった抽象的な言葉を、貴社独自の「具体的な行動リスト」へと「計画・作成」します。
そして、SVがそのリストを使いこなし、「事実」に基づく“正解”のフィードバックができるようになるまで、ロールプレイングを通じて「実行支援」いたします。
「何度言っても新人が動かない」と嘆く前に、あなたの「伝え方」が新人を迷わせていないか、一度見直してみませんか?
貴社の状況に合わせたROI(投資収益率)シミュレーションも、無料でご提示いたします。
この記事を書いた人
コンサルタント永久 圭一keiichi Nagaku
債権管理業務に計15年、コールセンター事業者2社(計13年)に在籍
SVや地方センターや在宅業務センターのセンター長等に従事後独立
保有資格
DX推進パスポート
JDLA Deep Learning for GENERAL (G検定)COPCリーンシックスシグマイエローベルト
- コンプライアンス・オフィサー・消費者金融コース
- ビジネスキャリア検定(労務管理)






