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「マニュアル通りにやれ」が現場で通用しない理由とは?顧客対応は常にイレギュラーの連続です。元コールセンター長が、分厚いマニュアルを廃止し、現場を救うための「一本の出口(エスカレーション)」戦略と、それを実現するための「泥臭い折衝力」について解説します。
「マニュアル通りにやればうまくいく仕組みを作りましょう」
外部の人間は簡単にそう言いますが、カスタマーサポートの現場を知る人間からすれば、思わずため息をつきたくなる言葉です。なぜなら、実際の現場は常に「イレギュラーの海」に沈んでいるからです。
■ すべてを網羅しようとするからマニュアルは破綻する
「Aの場合はこう、でもBの条件が重なったらこう、さらにCという履歴があれば……」
お客様の用件は多岐にわたり、状況によって対応は無限に分岐します。それをすべて一つのフローで網羅することなど、現実的にはほぼ不可能です。
結局、用件ごとに細かくフローを分けざるを得なくなり、結果として「誰も読まない分厚いマニュアル」が完成する。だからこそ、現場のSV(管理者)たちが「ルールを可視化・マニュアル化する」ことを嫌がるのは、元センター長としては痛いほど分かる、もっともな話だと思っています。
では、この「イレギュラーの海」で溺れないためにはどうすればいいのか?
過去のオペレーター向け研修で、私はいつもこう伝えていました。
「イレギュラーな状況は『必ず』起きる。だから、ひとりで対応しようとせず、必ず上長の指示を仰ぐこと」
マニュアル作りの正解は、すべてのイレギュラー対応を書き記すことではありません。「基本となるルール」を明確にし、そこから少しでも外れたものは個別にルール化せず、「すべてここへエスカレーション(報告・転送)する」という『一本の出口』を明確に作ることです。
■ ルールをシンプルにできるかは「折衝力」にかかっている
「なんだ、イレギュラーは全部エスカレーションしろってことか。それなら簡単だ」と思うかもしれません。しかし、現実のオペレーション構築はここからが泥臭いのです。
特に、業務を請け負っているBPO(コールセンター代行業者)の場合、この「一本の出口(エスカレーション先)」は、自社のSVではなく「クライアント(委託元企業)」に設定したいケースがほとんどです。
しかしクライアント側は、「お金を払って外注しているんだから、そっちで全部対応してよ」と考えます。
ここに、大きな矛盾が生じます。
現場のルールをシンプルにして、誰でもミスなく対応できる仕組みを作りたい。でも、そのためには「基本パターンから外れたイレギュラーは、クライアント側で巻き取ってもらう(エスカレーションする)」という合意が必要です。
つまり、コールセンターの現場に「機能するルール」を作れるかどうかは、現場のSVの気合いや文章力ではなく、「クライアントの理解」と「コールセンター側の折衝力(交渉力)」に大きく依存しているのです。
■ 「何でもやります」が現場を壊す
BPOのコールセンターにとって、一番やってはいけないのは、クライアントの言う通りに「あれもやります、このイレギュラーも現場で判断します」と安請け合いしてしまうことです。
自社の顧客ではないエンドユーザーに対し、クライアントの意向を汲み取りながら、どこまで現場で判断し、どこから先をエスカレーションの「出口」とするのか。そこの線を引く泥臭い交渉から逃げていると、ツケはすべて現場のオペレーターと分厚いマニュアルに回ってきます。
これは、自社運営(インハウス)のコールセンターや、他部署から業務を請け負っているCS部門でも全く同じ構造です。
いま、AIを使って現場の業務を効率化しようという動きが活発ですが、AIも「イレギュラーだらけの複雑なルール」をそのまま読み込ませたら必ず混乱します。
新しいツールを入れる前に、まずは「どこまでが基本で、どこからがイレギュラー(出口)なのか」、関係各所と泥臭く線を引くこと。それが、現場の崩壊を防ぐための本当の第一歩なのです。
この記事を書いた人
コンサルタント永久 圭一keiichi Nagaku
債権管理業務に計15年、コールセンター事業者2社(計13年)に在籍
SVや地方センターや在宅業務センターのセンター長等に従事後独立
保有資格
DX推進パスポート
JDLA Deep Learning for GENERAL (G検定)COPCリーンシックスシグマイエローベルト
- コンプライアンス・オフィサー・消費者金融コース
- ビジネスキャリア検定(労務管理)




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