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AHT(平均通話時間)の短縮という旧来の評価軸に疑問を呈す。解約抑止やクレーム対応の事例から、対話の「深さ」がもたらす価値を再定義。AIに定型業務を任せることで、人間が「CPHの呪縛」から解放され、顧客とのエンゲージメント強化に時間を割く新しい運営モデルを提案します。
コールセンターの運営において、AHT(平均通話時間)の短縮は長らく「正義」とされてきました。1秒でも早く電話を切り、CPH(1時間あたりの処理件数)を最大化することが、コスト効率の観点からも正しいと信じられてきたからです。
しかし、私はあえて問いたいのです。「オペレーターとの面談には時間をかけるのに、なぜ顧客との対話は短く済ませようとするのか?」と。
■ 「解約」という手段の裏にある、本当の目的を探る
例えば、カスタマーセンターにおける「解約抑止」の取り組みを考えてみてください。
「解約したい」という顧客に対し、事務的に手続きを案内すればAHTは最短で済みます。しかし、それでは顧客を失うだけです。
ここで必要なのは、あえて時間をかけた深い対話です。
「なぜ解約したいのか?」から始まり、「そもそも何に期待していたのか?」「なぜ期待通りの結果にならなかったのか?」を掘り下げていく。顧客自身も気づいていなかった「本来の目的」に再度フォーカスさせることで初めて、解約以外の選択肢が提示可能になります。
クレーム対応も同様です。
SVがエスカレーションを受け、腰を据えて「腹を割って」話す。その長時間の対話がもたらす「上司にしっかり話を聞いてもらえた」という満足感こそが、怒りを納得へと変える唯一の鍵となります。これらはすべて、AHTという物差しでは「非効率」と切り捨てられる領域です。
■ AIがもたらす「時間の再定義」
多くのセンター長は、こうした対話の重要性を痛いほど理解しています。しかし、膨大な入電数と人件費(コスト)の板挟みになり、結局は「最大公約数的な効率」を優先せざるを得ないのが実情でした。
ここに、AI導入の本質的な価値があります。AIの役割は、単なるコスト削減ではありません。
「情報のやり取りだけで済む用件」や「定型的な手続き」を、人件費のかからないAIに完全に任せる。そうすることで、人間側に「CPHの足かせのない自由な時間」を取り戻すことこそが真の目的であるべきです。
■ 人間にしかできない「戦略的AHT延長」
これからのコールセンターにおけるパラダイムシフトは、以下のようになります。
- AI: 感情を伴わない情報の処理を、超高効率で行う。
- 人間: 言語化されていない顧客の不満や期待を聴き取り、エンゲージメント(繋がり)を深めるために、「あえて長く話す」。
人間が対応する場合、指標にすべきは「短さ」ではなく、どれだけ顧客の懐に飛び込めたかという「深さ」です。AIによって効率化を担保しつつ、人間は時間をかけて顧客の感情をケアし、セールスの成功やファン化に繋げていく。
「効率化のためにAIを入れる」という段階を超え、「人間が人間らしい対話に時間を割くために、AIに道を譲ってもらう」。
そんな評価軸の転換こそが、これからの選ばれるセンターを作る条件になると確信しています。
この記事を書いた人
コンサルタント永久 圭一keiichi Nagaku
債権管理業務に計15年、コールセンター事業者2社(計13年)に在籍
SVや地方センターや在宅業務センターのセンター長等に従事後独立
保有資格
DX推進パスポート
JDLA Deep Learning for GENERAL (G検定)COPCリーンシックスシグマイエローベルト
- コンプライアンス・オフィサー・消費者金融コース
- ビジネスキャリア検定(労務管理)






