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「現場の自主性を待つ」という綺麗事は、地方の通販・コールセンター現場では通用しない。変化を嫌うスタッフやSVの本音を鋭く突きながら、潜在能力を強制的に開花させる『戦略的トップダウン(正しい旗振り)』の鉄則を、現場経験のべ28年のコンサルタントが明かす。
コールセンターの組織改革やDXを進めようとするとき、多くの経営層やセンター長はひとつの「罠」に陥ります。
それは、「現場の自主性を重んじ、ボトムアップで変わるのを待つ」という理想主義です。
「スタッフが自発的に動いてくれるのが理想」「現場が納得して動き出すのを待ちたい」
理屈上非常に美しく聞こえますが、私から言わせれば、これは地方の中小企業のリアルを知らない人間の「机上の空論」です。
地方在住の、保守的で変化を嫌う組織を本当に覚醒させたいのであれば、必要なのはボトムアップを待つことではありません。トップダウンによる「強烈な旗振り(強制)」です。
■ 「自主性」に任せた現場が静かに崩壊する理由
かつての、マニュアルが全く整備されていないある地方のコールセンター現場でのことです。
私は現場の自主性を引き出そうと、スタッフたちに「せっかくの機会だから、自分たちが一番理解しやすいマニュアルを、自分たちの手で作ってみてはどうか?」と優しく働きかけたことがありました。
その場では、スタッフたちも頷き、やる気を見せてくれました。しかし、待てど暮らせど、マニュアルが一向に作成されてくることはありませんでした。
また、全オペレーター(OP)に対して「私から直接、自分の応対に対するアドバイスが欲しい人は、いつでも言ってきてください。個別にフィードバック面談を行います」と声をかけたこともあります。成長の機会を自発的に掴んでほしかったのです。しかし、実際に自ら手を挙げてきたのは、数十人のOPの中でたったの「1人」だけでした。
これが、現場のリアルです。
地方の現場において、多くのOPはほぼ意思表示をしません。「自分の意見を言うことは、上司への反抗・反発と捉えられるのではないか」という古い恐怖心を持っているケースが少なくないからです。
さらに問題なのは、中間に挟まれるSV層です。新しい運用を導入しようとすると、SVは決まって「OPたちのスキルでは、この変更には対応できません」と声を揃えます。
しかし、その本音を深く掘り下げていくと、OPのスキル不足だけが理由ではありません。SV自身が「自分の教育・マネジメント能力に自信がない」こと、そして「新しい業務変更に余計な労力をかけるのが、ただ面倒で嫌なだけ」という心理が隠されているのです。
この状態でボトムアップ(自主性)を待つことは、変化を嫌う現場の「現状維持の言い訳」に付き合い続け、組織を静かに硬直させる結果にしかなりません。
■ 「やることと期日」を強制された人間は覚醒する
こういった現場では理想主義を捨て、ある程度の「強制」という刺激を与える。これこそが、スタッフの潜在能力を引っ張り出す唯一の鍵となります。
例えば、現場のリーダー格のSVが突然退職したり、新しい業務が始まって新チームを編成せざるを得なくなったりする瞬間があります。否応なしに、新しいSVを任命しなければならない状況です。
打診されたスタッフたちは、最初は例外なく皆「私なんかには到底務まりません」と弱腰になります。勇気がなくて、未知のことにチャレンジした経験が今までになかったからです。
しかし、ここでトップダウンの出番です。
組織としての旗を強く振り、「やるべき実務」と「完了すべき期日」を明確に決めて、半ば強制的にその役割を握らせる。
すると、驚くべき変化が起こります。
いざ走り出してしまえば、彼らの能力は都会の優秀なSVと比べても何の大差もありません。期日とやることが明確だからこそ、殆どのスタッフは迷うことなく、しっかりと業務を遂行できるようになっていくのです。
現場に必要なのは、「やる気」の有無ではありませんでした。「チャレンジするきっかけ(強制力)」がなかっただけなのです。
■ トップダウンの旗振りこそが、本当の優しさである
「強制する」と言うと、独裁的で現場を無視した行為のように思われるかもしれません。
しかし、未知の領域に対して「勇気が出ない」という理由だけで立ち止まっているスタッフたちの背中を、ルールと期日によって強烈に押し込んであげること。これこそが、彼らの潜在能力を開花させるための、トップダウンの「正しい旗振り」です。
理想論に逃げて現場の自主性を待ち、結果として誰も育たないぬるま湯の組織を作るのか。
それとも、トップダウンで一歩を踏み出させ、スタッフ自身に「やればできる」という本物の自信を掴ませるのか。
変化を嫌う現場を動かせるのは、綺麗な横文字を並べるコンサルタントではありません。現場の心理を握り、泥臭くトップダウンの旗を振れる、実務のプロフェッショナルだけです。
この記事を書いた人
コンサルタント永久 圭一keiichi Nagaku
債権管理業務に計15年、コールセンター事業者2社(計13年)に在籍
SVや地方センターや在宅業務センターのセンター長等に従事後独立
保有資格
DX推進パスポート
JDLA Deep Learning for GENERAL (G検定)COPCリーンシックスシグマイエローベルト
- コンプライアンス・オフィサー・消費者金融コース
- ビジネスキャリア検定(労務管理)






