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「教えたはずなのに動けない…」その原因は、良かれと思って渡した「情報の羅列」かもしれません。新人の思考を停止させるマニュアルの弊害と、シンプルに伝える「KISSの法則」を活用した、自走する人材の育て方を解説します。
「とりあえず、このマニュアル、明日までに読んでおいてね」
「この業務の注意点は、アレとコレと、あと過去にこんな事例もあったから覚えておいて…」
新人研修の初日。やる気に満ちて入社してきた新人の目が、夕方には死んだ魚のようになっている…。そんな光景を、私は嫌というほど見てきました。
SVやトレーナーは、良かれと思って「全て」を伝えようとします。
しかし、その「情報の羅列」こそが、新人のキャパシティをオーバーさせ、自信を喪失させる最大の原因なのです。
研修における「KISSの法則」とは?
マーケティングやデザインの世界に「KISSの法則」という言葉があります。
“Keep It Simple, Stupid.”(シンプルにしておけ、この間抜け)
少し乱暴な言葉ですが、これはOJT(現場教育)においてこそ、真理です。ベテランにとっての「常識」や「例外対応」も、新人にとっては「未知の暗号」です。
一度に10個の注意事項(情報の羅列)を伝えても、新人は1つも覚えられません。OJTで意識すべきは、情報を削ぎ落とす勇気です。
「今日覚えてほしいのは、この1点だけ」
「迷ったら、この原則に戻ればいい」
そうやって情報を極限までシンプルにする(KISSする)ことで初めて、新人は「これなら自分にもできそうだ」という自己効力感を持つことができます。
「思考停止マニュアル」の罪
また、多くの現場で見られるのが、分厚すぎる「手順書型マニュアル」の弊害です。
「Aと言われたらBと答える」「画面のここをクリックする」といった手順だけが延々と書かれたマニュアル。私はこれを「思考停止マニュアル」と呼んでいます。
これに頼りきった教育を受けると、新人は「書いてあること」しかしなくなります。そして、マニュアルにないイレギュラーが発生した瞬間、フリーズします。
「マニュアルに書いてなかったので、対応できませんでした」
そう言われて愕然とした経験はありませんか? それは、新人の責任ではなく、マニュアルの責任です。
「手順」ではなく「地図」を渡す
本当に使えるマニュアルとは、手順の羅列ではなく、思考の「地図」であるべきです。
- なぜ、その操作が必要なのか?(目的)
- お客様は何を求めて電話してきているのか?(背景)
- 迷った時は、何を基準に判断すればいいのか?(判断軸)
これら「思考の軸」さえシンプルに伝わっていれば、多少の手順の違いやイレギュラーがあっても、現場の人間は自分で考えて動くことができます。
まとめ:引き算の教育を
情報を足すのは簡単です。しかし、情報を引いてシンプルに伝えるには、教える側に高度な理解とスキルが必要です。
「新人がなかなか育たない」
そう感じたら、一度彼らに渡しているマニュアルや、OJTの内容を見直してみてください。それは、
新人を助ける「地図」になっていますか?それとも、ただの「文字の壁」になっていませんか?
この記事を書いた人
コンサルタント永久 圭一keiichi Nagaku
債権管理業務に計15年、コールセンター事業者2社(計13年)に在籍
SVや地方センターや在宅業務センターのセンター長等に従事後独立
保有資格
DX推進パスポート
JDLA Deep Learning for GENERAL (G検定)COPCリーンシックスシグマイエローベルト
- コンプライアンス・オフィサー・消費者金融コース
- ビジネスキャリア検定(労務管理)






