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「怒られない職場」ほど、優秀な人材から辞めていく。心理的安全性と「ぬるま湯」を履き違え、真面目な社員を絶望させていませんか?エース社員が去る本当の理由と、組織崩壊を防ぐためにリーダーが持つべき「明確な基準」と「叱る技術」について解説します。
「最近の若い子は、注意するとすぐに辞めてしまう」
「ハラスメントと言われるのが怖いから、なるべく褒めて伸ばしたい」
多くのマネージャーがこのようなお悩みをお持ちなのではないでしょうか?
世の中で「心理的安全性」や「エンゲージメント」という言葉が流行った結果、多くの組織が「居心地の良さ」を最優先にするようになりました。
- 遅刻しても強く言わない。
- 目標未達でも「プロセス」を無理やり褒める。
- ルールを破っても「彼なりの事情がある」と目をつぶる。
一見、優しくて働きやすい職場に見えます。しかし、私は現場の経験から断言します。
「間違いを指摘されない(怒られない)職場」こそが、最も組織を崩壊させます。
しかも、最初に辞めていくのは「ルールを守らないルーズな社員」ではありません。「誰よりも真面目に働き、一番成果を出しているエース社員」から先に辞めていくのです。
今回は、多くのリーダーが陥っている「優しさ」と「甘さ」の致命的な勘違いについてお話しします。
真面目な社員を絶望させる「不公平感」の正体
なぜ、「怒られない職場」で優秀な人が辞めるのでしょうか。理由はシンプルで、「馬鹿馬鹿しくなるから」です。例えば、あるコールセンターの現場を想像してください。
Aさんは、始業10分前には準備を整え、スクリプト通り丁寧に顧客対応をし、後処理も正確に行っています。
一方、隣の席のBさんは、始業ギリギリに駆け込み、スクリプトを無視して自己流で話し、面倒な後処理入力をサボっています。
ここでマネージャーが、Bさんに対して「厳しく言って辞められたら困るから」と、見て見ぬふりをしたらどうなるでしょうか。Aさんは思います。
「なぜ、ルールを守っている私と、サボっているBさんが同じ給料なのか?」
「Bさんがサボった分のしわ寄せ(ミスの修正やクレーム対応)が、全部私に来ている」
「この会社は、頑張るだけ損だ」
そう感じた瞬間、Aさんの心の中で組織への信頼は完全に失われます。Bさんのようなルーズな社員にとって、その職場は「天国」ですが、Aさんのようなハイパフォーマーにとっては「地獄」なのです。
「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉通り、規律のない優しさは組織の良心を殺します。
「感情」で怒らず「理屈」で叱る
では、マネージャーはどうすべきか。
「嫌われてもいいから、怒鳴り散らせ」と言っているわけではありません。重要なのは、「感情」と「事実(理屈)」を明確に分けることです。
多くのマネージャーが注意を躊躇するのは、「怒る=感情をぶつけること」だと思っているからです。「なんでこんなこともできないの!」「やる気あるの?」といった言葉は、単なる感情の爆発であり、ハラスメントです。これは絶対にNGです。
一方で、必要なのは「基準(事実)とのズレを指摘すること」です。
- 私たちのチームでは『お客様に正確な情報を伝える』ために『スクリプトを読む』というルールがあるよね(基準)。
- でも、今回の対応では自己流の説明になっていたね(事実)。
- これだと誤案内のリスクがあるから、次は必ずスクリプト通りに戻してほしい(是正)。
- 何かスクリプト通りにできない理由はあった?(確認)
ここには、マネージャーの「イライラ」という感情は1ミリも必要ありません。あるのは「ルール(基準)」と「事実」の照合だけです。これなら、言われた側も人格否定されたとは感じず、業務上の修正として受け止められます。
「叱れない」本当の原因は、基準がないから
もし今、あなたが部下に注意することを躊躇しているなら、それは「嫌われたくない」という心理的な理由だけではないはずです。もっと根本的な原因は、「自信を持って注意するための『明確な基準』が組織にないから」ではないでしょうか。
- 「丁寧に対応して」と言っているが、何が丁寧で何が雑かの定義がない
- 「しっかりやって」と言っているが、どこまでやればOKかのラインがない
基準が曖昧だから、注意しようとすると「お前の主観だろ」と言われそうで怖くなり、結果として「感情」で押し切るか、「黙認」するかの二択になってしまうのです。
結論:本当の優しさとは「規律」である
従業員にとっての「心理的安全性」とは、「ぬるま湯に浸かること」ではありません。「健全な衝突や、率直な指摘が許される関係性」のことです。真面目な社員が報われる組織を作るために、リーダーがすべきことは、部下の顔色を伺うことではありません。
- 誰が見ても明らかな「業務の基準(ルール・型)」を作る
- 基準を守れている人を正当に評価する
- 基準を守れていない人には、事実ベースで淡々とフィードバックする
この「冷徹な仕組み」こそが、結果として社員を守る「最大の防波堤(優しさ)」になります。
皆さんの組織には、自信を持って「それはNGだ」と言えるだけの明確な基準がありますか?もし、その基準作りで迷われているなら、ぜひ一度ご相談ください。
この記事を書いた人
コンサルタント永久 圭一keiichi Nagaku
債権管理業務に計15年、コールセンター事業者2社(計13年)に在籍
SVや地方センターや在宅業務センターのセンター長等に従事後独立
保有資格
DX推進パスポート
JDLA Deep Learning for GENERAL (G検定)COPCリーンシックスシグマイエローベルト
- コンプライアンス・オフィサー・消費者金融コース
- ビジネスキャリア検定(労務管理)






