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テレアポなど成果が出にくい業務で、部下が疲弊していませんか?数字の可視化は、時として「敗北の確認」になります。結果ではなくプロセスを評価する「クエスト型マネジメント」で自己効力感を高め、離職率を下げる方法を解説。
コールセンターの現場には、2種類の仕事があります。一つは「攻略法がある仕事」。もう一つは「確率論の壁がある仕事」です。
私は20代の頃、電話による債権督促(回収)の仕事をしていました。きつい仕事だと思われがちですが、それだけではなく当時の私は無意識にこの業務を楽しむ視点も持っていました。なぜなら、「相手をどうロジカルに説得し、返済に導くか?」という「攻略性」があったからです。
自分のスキル次第で結果が変わるため、それはまさに「難易度の高いパズルゲーム」でした。
しかし、その後経験したインサイドセールス(テレアポ)は違いました。アポイント取得率はわずか1%。100回かけて99回断られる世界です。督促で培った「攻略のメンタル」で挑んでも、あまりにも成功体験が少なすぎて、心が折れそうになります。
「自分は役に立っていないのではないか?」という無力感が襲ってくるのです。
「数字の可視化」だけでは、人は救われない
よく「数字をグラフ化して競争させればモチベーションが上がる」というマネジメント論があります。
しかし、アポ率1%の世界でそれをやると、どうなるか?
「今日も0件だった」という「敗北の可視化」になり、逆効果になります。成果(Result)だけをゴールにした「ゲーム」は、高難易度の業務では機能しないのです。
では、どうすれば「負け続け」の業務でも、スタッフは熱狂できるのか?
必要なのは、「プロセスへの自己効力感」を持たせることです。
「正しく負けること」を評価する
私が考える「クエスト型マネジメント」では、ゴールの定義を変えます。「アポが取れたか(結果)」ではなく、「目的に沿った正しいアプローチができたか(プロセス)」をクエスト(評価対象)にするのです。
業務フローやトークスクリプトの意図を深く共有し、
「断られたけれど、スクリプトのBパターンまで移行できた」「アポにはならなかったが、決裁者の名前は聞けた」
という「小さな前進」を可視化し、称賛します。これにより、スタッフは
「成果は出なかったが、私はやるべきことを正しく遂行できている」
という「自己効力感」を持ち帰ることができます。これが、翌日の電話をかける勇気になります。
「終わりのないマラソン」にゴールテープを
また、数字による可視化にはもう一つ、重要な役割があります。それは「心理的なオーバーワーク」を防ぐことです。
「とにかく頑張れ」という指示は、「ゴールのないマラソンを走れ」と言うのと同じです。これでは脳が疲弊し、いつか倒れます。
「今日は50件コールしたら終わり」「3人に資料送付できたらクリア」というふうに、数字で明確な「ゴールテープ(区切り)」を用意すること。
「ここまでやれば、今日の自分は合格だ」
そう思える瞬間を作ることで、永遠に続くような業務ストレスから解放され、健全なメンタルを維持できるのです。
マネージャーの仕事は「勝てるルール」を作ること
もし、皆さんの部下が「成果が出ない」と落ち込んでいるなら、それは部下の能力のせいではありません。「勝てる確率が低すぎるルール」を強いている、マネジメントの責任です。
結果が出にくいなら、プロセスの達成を「勝利」と定義し直す。
終わりのない業務なら、数字で「ゴール」を作ってあげる。
それが、離職率を劇的に下げ、どんな過酷な現場でも「熱狂」を生み出すための仕掛けです。
ただし、「理不尽なゲーム」を作ってはいけない
ここまで読んで、「よし、明日からグラフを貼り出そう」と思った方は、少し待ってください。ゲーム化には、一つだけ致命的なリスクがあります。
それは、設計を間違えると、誰もやりたがらない「理不尽なゲーム(欠陥のあるルール)」になってしまい、かえって現場が白けることです。
- 難易度が高すぎて誰もクリアできない。
- 評価基準が曖昧で、SVの好き嫌いで点数が決まる。
- 報酬(承認)が魅力的でなく、やる気が出ない。
これでは逆効果です。
重要なのは「今のスタッフのレベルに合わせて、ギリギリ届く目標設定(ゲームバランス)」を緻密に計算することです。この「ゲームバランスの調整(KPI設計)」こそが、プロの腕の見せ所なのです。
あなたの現場を「熱狂」させる設計図を描きます
「ウチの業務は特殊だから、どうルール化すればいいか分からない」
「過去にランキングを貼り出して、逆に雰囲気が悪くなったことがある」
そうお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。私は、貴社の業務フローを分析し、
「どのプロセスを評価すれば、スタッフが熱狂するか?」
という「勝利条件」を再定義します。単なる精神論や、場当たり的なイベントではない、「人が辞めない仕組み」を、貴社の現場に実装します。
【無料相談特典】
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この記事を書いた人
コンサルタント永久 圭一keiichi Nagaku
債権管理業務に計15年、コールセンター事業者2社(計13年)に在籍
SVや地方センターや在宅業務センターのセンター長等に従事後独立
保有資格
DX推進パスポート
JDLA Deep Learning for GENERAL (G検定)COPCリーンシックスシグマイエローベルト
- コンプライアンス・オフィサー・消費者金融コース
- ビジネスキャリア検定(労務管理)






