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なぜ、あの人のOJTは分かりやすい?コールセンターの新人育成の差は、感覚的な指導ではなく「情報の構造化」にありました。誰が教えても新人が迷わないOJTの"型"の作り方とは。指導効率と新人定着率を上げる3つの技術を公開。
「良かれと思って丁寧にOJTをしたのに、新人がなかなか覚えてくれない…」
「同じことを何度も聞かれると、ついイライラしてしまう…」
コールセンターで新人育成に携わるSVや先輩社員から、こうした「教えることの難しさ」に関する悩みを本当によく耳にします。しかし、その裏で、教わっている新人は「自分の覚えが悪いせいだ…」と自信を失い、人知れず退職を考えているとしたら…。
この問題の根底には、多くの方が気づいていない、OJTにおける決定的な「落とし穴」が存在します。それは、分かりやすく整理する作業を、無意識のうちに新人オペレーターに丸投げしてしまっている、という事実です。今回は、この構造的な問題を解き明かします。
「教える」とは、頭の中の“表”を完成させて渡すこと
コミュニケーションが上手な人は、無意識のうちに、頭の中で情報を「表」のように整理し、構造化しています。
例えば、複数の料金プランの比較方法を新人に教える場合。彼らの頭の中には、下のような「表」が瞬時に出来上がっています。
プランA | プランB | |
月額料金 | 〇〇円 | ××円 |
データ容量 | 20GB | 無制限 |
通話オプション | 5分かけ放題 | 完全かけ放題 |
注意点 | 2年契約が必要 | 契約縛りなし |
そして、この完成された「表」を相手にそっと手渡すように、一つひとつ、カテゴリーに沿って情報を提示していくのです。「まず料金だけど、プランAは〇〇円、プランBは××円。次にデータ容量は…」というように。これなら、聞いている新人は混乱することなく、情報を整理しながら理解できます。
ところが、OJTがうまくいかない場合、多くはこの「表」そのものではなく、「表を作るための材料」を、バラバラのまま相手に投げつけてしまっているのです。
「えーと、プランAは基本料が〇〇円で、これに通話オプションが含まれてる。あと、データは20GBね。一方でBプランというのがあって、これはデータが無制限なんだけど、基本料が××円で、あ、ただAプランの方は2年契約が条件になってて…」
いかがでしょうか。一つひとつの情報は間違っていません。しかし、聞かされた新人の頭の中は、情報の断片で溢れかえり、パニック状態です。これは、言わば「今から私が言う材料を使って、ご自身で料金比較表を作ってください」と、最も大変な整理・構造化の作業を相手に強いているのと同じことなのです。
新人が求めているのは、素材の味を一つひとつ吟味することではなく、完成された美味しい「料理」です。私たちは「情報の料理人」として、素材(情報)を整理し、調理し、最も分かりやすい形(構造化)で提供する責任があります。
新人の頭の中に「表」を描くための3つのOJT技術
では、どうすれば私たちは新人に「完成した表」を渡せるようになるのでしょうか。これは才能ではなく、トレーニングで習得できる「技術」です。
1.最初に「表の枠組み」を宣言する
いきなり詳細を話し始めるのではなく、まず「これから何について、いくつのポイントで話すのか」という全体像を提示しましょう。「今日のOJTでは、この商品の説明方法について、『料金』『サービス内容』『ご注意点』の3つのポイントで教えますね」のように、話の地図(=表の列や行のタイトル)を最初に渡すのです。これにより、新人は頭の中に情報の「受け皿」を用意でき、安心して話を聞く体制に入れます。
2.複雑な説明は、一度「書き出して」教える
特に複雑な案内を教える前には、OJT担当者自身が、実際に紙やメモ帳に簡単な「表」を書き出し、それを見せながら教えるトレーニングが極めて有効です。この物理的な作業が、教える側の頭の中を驚くほどクリアにし、OJTの質を劇的に向上させます。
3.最後に「完成した表」を要約して確認する
一通り教え終えたら、必ずこちら側で要点をまとめ、新人の認識が合っているかを確認するステップを入れましょう。「ここまでの内容をまとめると、〇〇という点が一番大事なんだけど、この理解で合ってるかな?」といった形です。これにより、認識のズレを防ぎ、新人は「ちゃんと理解できた」という成功体験と安心感を得ることができます。
「採用と研修の繰り返し」に悩むSV・マネージャーのための解決策
「分かりやすく教える」という具体的な技術は、新人が自信を持って成長するための重要な要素です。
そして、このような「伝え方の技術」は、これまで私たちが論じてきた「対話の姿勢」「言葉の統一」「心理的安全性の高い文化」という土台があってこそ、真にその効果を発揮します。
私たちWanderinConsultingは、これら全ての側面から、貴社の根深い課題を解決するため、コールセンターの現場から生まれた専門的なプログラムをご提供します。
新人オペレーターが辞めない組織を作る「定着率改善」実践プログラム
こんなお悩みはありませんか?
- 手塩にかけて育てた新人が、研修期間中や独り立ち直後に辞めてしまう。
- 採用コストと研修コストがかさみ、センターの収益を圧迫している。
- SVが新人への指導や面談に時間を取られ、本来のマネジメント業務に集中できない。
- 場当たり的な指導が多く、誰が教えるかによって新人の成長に差が出てしまう。
本プログラムが提供する3つの価値
1.財務的負債の解決
高い離職率という「財務的負債」を直接的に解決し、具体的な採用・研修コストの削減を実現します。
2.マネージャーの負担軽減
SVやマネージャーの精神的・時間的負担を大幅に軽減し、本来注力すべき品質向上や戦略立案のための時間を創出します。
3.「仕組み」の構築
一過性の研修ではなく、貴社に「人が定着する仕組み」そのものを構築し、持続可能で安定したセンター運営を可能にします。
サービス内容(3ヶ月間のステップ)
私たちのプログラムは、以下の3つのフェーズで、貴社に「人が定着する仕組み」を構築します。
Phase 1: 診断フェーズ(現状把握・課題特定)
スタッフへの匿名アンケートやマネージャーへのヒアリング、各種KPI、マニュアル、実際の通話音声データなどを分析。 貴社の離職に関する本当の課題を特定し、「組織診断レポート」としてご提出します。
Phase 2: 計画フェーズ(改善計画の策定)
診断レポートに基づき、貴社と共同で、現場で実行可能な具体的な改善アクションプランを策定します。
Phase 3: 実行支援フェーズ(仕組みの導入と定着)
アクションプランを現場で実行するために必要なマネジメントスキルを、実践的なトレーニング形式(例:2時間×3回)で提供します。
プログラム概要
- 対象: Eコマース(通販)業界のコールセンター(15〜75席規模)に従事するマネージャー、SV様
- 期間: 約3ヶ月
- 価格: 150万円(税抜)
まずは、貴社の課題を私たちにお聞かせください。
私たちのコンサルティングは、単なる「コスト」ではありません。企業の財務的損失を食い止め、未来の成長に繋がるリターンが明確な「投資」です。初回のご相談では、貴社の状況に合わせた
ROI(投資収益率)シミュレーションもご提示可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
コンサルタント永久 圭一keiichi Nagaku
債権管理業務に計15年、コールセンター事業者2社(計13年)に在籍
SVや地方センターや在宅業務センターのセンター長等に従事後独立
保有資格
DX推進パスポート
JDLA Deep Learning for GENERAL (G検定)
COPCリーンシックスシグマイエローベルト
- コンプライアンス・オフィサー・消費者金融コース
- ビジネスキャリア検定(労務管理)